暑い都会

梅雨が明け、本格的な夏です。
都会では、屋上緑化というキーワードが流行しています。言葉どおり、屋上を緑にすると、よいのではないかという話です。
最近、都内の区では、その屋上緑化に対して、個人や法人に対して補助を行う制度を作りました。
その中に、
セダムやコケ」は除く
とあります。?だって、屋上緑化といえばセダムでしょう。と思っていたら、それを除くとはいかに。
問い合わせると、都心7区千代田・中央・港・新宿・台東・品川・目黒、東京都、および関係7団体で設立したクールルーフ推進協議会のレポートをベースに判断したそうなのです。
 「屋上緑化ヒートアイランド緩和効果」
という文書には、確かに、ただの土とセダムは同様に効果がない、という結論が書いてありました。ですので、低木や普通の木が望ましいという結論が導き出されています。
その文書では、ヒートアイランド緩和効果を測定しています。そのパラメータが「顕熱」というものですが、

本研究で用いた試験体が小面積なため、十分な吹走距離(フェッチ)
が得られなかったことから、実測ではなく、(1)式の
残差として求めた。

そうなのです。その結果、ただの土とセダムは同じだったのです。
もちろん、ただの土では、屋上緑化にはなりませんね。それに、大雨が降れば、簡単に流出してしまうので、意味がありません。
また、

この結果からすれば、セダム区は、建物への伝熱
は小さく抑えられるものの、日中は、無処理区よりも
大気を加熱してしまうこととなる。このような解析結
果となった原因の一つとして、セダム区の粗度が無処
理区に比べ大きく、より多くの顕熱が上空大気に伝わ
りやすかったことが考えられる。また、セダムは、芝
やイワダレソウとは異なり草丈が高く、CAM植物で
あることから植物体には多量の水分を含むため、植物
体への相当量の蓄熱が考えられる。したがって、今回
用いた熱収支の評価法では、植物体への蓄熱は考慮し
ていないことから、顕熱を過大評価している可能性が
ある。今後、セダム区の熱収支の評価に際しては植物
体への蓄熱を考慮した検討が必要であろう。

のように、パラメータとして顕熱を過大評価しているのではないかと自問自答されています。
セダムは5cmほどの土があれば、みずやりをしなくても生き延びられます。芝では、枯れてしまうといわれています。5cmの土と、その保水の重量は、地震の影響を最小限にできるほど、軽量なものらしいです。そこに、何十cmの土と木を植えるような屋上を作るには、もともとそういう設計をした建物を造らなければならないようです。

本研究は、軽量薄層の緑化試験体を既存建物屋上に
設置し、それらの熱収支特性を調査測定することによ
って、軽量薄層な屋上緑化施設の持つヒートアイラン
ド緩和効果を定量的に検討することを目的として行っ
た。

 つまり、この資料は、軽量薄層の緑化試験体をレポートしたものだが、このレポートを根拠に作られた、
クールルーフ推進事業交付金交付要綱では、

(定義)
第2条 この要綱において「屋上緑化」とは、植物等の植栽地又は育成のために必要な土壌基盤等(以下「植栽基盤」という。)を樹木、芝、草花等蒸発効率の高い植物(セダム・コケは除く)で覆ったものを建築物屋上や屋根部分(以下「建築物屋上」という。)に設置する施設をいう。

と、樹木や芝もしくはその複合体を屋上に植えることを希望している。

 微妙に食い違っているような気がしてならない。
 個人的には、このレポートから導き出される結論は、5cmの土を2ヶ月放置すれば、雑草で緑化され、枯れたらまた雑草が生えるので、みずやりをしなくてもよいなー、と。