Google Chrome OSが出荷されると、さらに日本の半導体産業が打撃を受けるという、風が吹けば桶屋がもうかるというたとえと同じ現象がおこるかもしれない、日本の危機についての考察

1年後にOSが出荷される。このOSは、ARMとIntelの2種類のマイコンの上で動く。
ARMは、いろいろと拡張してきて、スピードが出せなくなったマイコンを、Cortexシリーズとして、パフォーマンスがちゃんとでるシリーズに変更中だ。Cortexシリーズには、AシリーズというMMUを積んだ、ネットPCに最適なマイコンを用意している。このARMは、イギリスの会社で、ライセンスを発行しているだけの会社である。ケイタイはほぼ、この会社に牛耳られてしまった。次は、家電業界であり、車である。そして、Intelの牙城であるパソコンをも視野に入れている。
そこまでは、当然の展開であって、Intelがあわてているだけで、日本に影響はない。


日本の半導体産業が世界の半分のメモリを作っていた時代がある。その原動力は、優秀な生産者であり、製造のキーであるステッパを、キヤノンニコンが作り、エンドユーザーである半導体製造者からのフィードバックにより、より優秀なステッパが作られていき、世界のほとんどをこの2社が支配していた。その後、アメリカはそれはまずいと気がつき、今は3割のシェアを持つ、国の投資で伸びた半導体製造装置の会社が存在している。

キヤノンニコンも1企業であるから、それを必要としていた韓国と台湾にも売った。国内の大手の土建会社も、海外に、日本でノウハウを蓄積した結果、最新鋭の半導体製造工場を建てて行った。

その結果、日本国内は、古い半導体製造装置ばかりが残ったのが、現状。つまり、世界とは戦えなくなった。


国策として、そういうものを中国に移転してしまってはいけないといっても、あとのまつりである。役人は見て見ぬふり、政治家はその重要性はわからない。


中国では、電脳を量産していない。試作レベルはある。
話は戻って、ARMである。ここは、基本的に、アーキテクチャを売っているだけである。マイコンをシリコンレベルに落とすのは、エンドユーザー側であるため、同じARM11といっても、内容は、みんな違っている。
SOCといって、シリコンの上に、マイコンの核になる部分でさえ、ユーザーのニーズに合わせて、機能を実装したり外したりできる。
マザーボード大手のASUSTeKは、マザーボードの設計から、音のチップの設計ぐらいはやっているが、今度、電脳を設計できる立場になる。Google Chrome OSに使われるマイコンARMには、標準品はないのである。使う側がIPをチョイスし、カスタムのマイコンを作ってしまわなければならない。
ここで、グラフィックや音の周辺機能の多くを1つのSOCに作りこんでしまえば、たかだか2000円ほどの原価で、ワンチップ電脳が用意できてしまう。
ネットPCは2万円を切る価格まで早々に落ちてしまうだろう。


日本の半導体を作っていた会社の経営者の経営判断の失敗によって、もうすこし延命できたかもしれないが、どんどん産業のコメと言われた半導体は、中国で作られるようになってくる。イギリスは、アヘンに代わってARMが中国から甘い汁を吸い上げ、家電用の半導体も、中国で設計ができるようになるのは10年かからないかもしれない。車用は、もう少し先になるかもしれないけど。